昌彦

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プラシーボの逆、水滴実験・ノーシーボ

プラシーボとは偽薬実験ともいい、本当はなんの効果も無い薬を飲ませたのに、体調が回復したりする現象です。要は思いこみで病気が治っちゃう訳ですね。「病は気から」と言いますが、中には末期癌が治った人すらいます。ではノーシーボとは何か。プラシーボの逆で、思いこみで人は具合が悪くなるのか?ということです。昔、アメリカのとある死刑囚に、実験を持ちかけた科学者達がいました。当時、人間の全身の血液の量は大体体重の10%位だと考えられており、その科学者はもっとたくさんあるはずだ、どうせ死刑なら、この実験に協力してくれないか?と持ちかけた訳です。この実験、水滴実験と言うのですが、実際には血液を抜かないで、水滴がポタポタ落ちる音を死刑囚に聞かせて、どうなるか?という実験だった訳です。この死刑囚は、科学者が、「体重の10%以上の血液が抜けたよ」と伝えられた時には、なんと死んでしまっていたんです。(ちなみに人間の血液量は、10%より少なく、体重✕1/13kgだそうです)ノーシーボやマイナシーボとも表現されますが、人間は思いこみで死んでしまうことが、この実験で証明されてしまったんです。他にも、完全に健康な人に、「あなたは末期癌ですね」と医療ミスで伝えられたところ、その人はどんどん元気が無くなり、告知された期間も待たずに亡くなってしまった、ということが起こったことが知られています。ワンちゃん、猫ちゃん達に思いこませることはできないので、プラシーボで治すことはできませんが。また、僕のストレス性喘息は普通の喘息よりずっと治りにくい、と言われていますが、喘息が治る新薬です!とでも言われて、治ったりしないでしょうか?実際に、喘息で倒れて半月分記憶喪失になったことがあるのですが、その時、自分が喘息にかかっている、ということを忘れていたんです。なんと、その頃は喘息の症状が一切出ませんでした。自分が喘息だ、ということだけを忘れさせる治療は無いものですかねぇ?

尿道閉塞

ワンちゃんと猫ちゃんで重症度が異なりますが、基本的に雄が罹り、かつ、尿が3日以上出ないと、尿毒症になり死亡する可能性も出てくる病気です。今までで一番連れて来るのが遅かったのは猫ちゃんを10日、尿が出ていないのに来院せず、膀胱は破裂し、そのまま死亡してしまったこともあります。ワンちゃん、猫ちゃんで重症度が違うと言うのは、猫ちゃんは尿道が柔らかく、尿道カテーテルを簡単に入れることができ、閉塞の解除も簡単であると言うことです。一方、ワンちゃんの場合、ペニスに陰茎骨という、骨が存在しており、石が引っかかった時の閉塞を深刻にしています。今までで一番困ったのは、通常陰茎骨の手前側で引っかかるのですが、寄りによって、陰茎骨の部分で引っかかってしまったワンちゃんです。こうなるともう、手術して摘出手術する以外の方法が存在しません。何度も石が引っかかったり、引っかかってもう取り去ることができない場合、陰嚢部分を切り取って、尿道を開き、その部分に新しい尿動口をつくる手術を行うことになります。手術自体は難しくないのですが、粘膜と皮膚を縫い合わせる際に、これがくっつくのに時間がかかるため、術後の管理の方が大変な手術と言えるでしょう。

犬と猫の糖尿病のちょっとした違い

生理学的な専門用語を使うと分かりにくくなるので、簡単にわかるように説明させていただきます。まず、ワンちゃんの糖尿病は基本的に、膵臓の機能が完全に失われることが多いため、一度必要なインスリンの量がわかると、毎回決まった量を注射することで、血糖値を抑えることができる傾向にあります。ただし、確実ではないので、もちろん検査をしながらインスリンの用量を決めることがほとんどです。一方、猫ちゃんの糖尿病の場合、膵臓のインスリン分泌機能が完全に無くなることがなく、その時々によって、インスリン分泌量が減ったり増えたりするため、より細かい血糖値の検査が必要になってきます。当院では2週間ごとに、当日の血糖値と長期血糖を表すフルクトサミン(人間のヘモグロビンa1cとほぼ同じ変動を示すことが分かっています)を調べて、打つべきインスリンの用量を決定しています。また、ワンちゃんより猫ちゃんの方が糖尿病になりやすい傾向にあるようです。糖尿病になってから、インスリンを打たないでいると、ケトアシドーシスと言って、体に毒であるケトンと、血中の酸性度が高まり、死亡することがあります。さらに、高用量のインスリンを打ってしまっても、低血糖症を起こして死亡することがあるため、定期的な血糖値の確認が重要になってきます。猫ちゃんの方が変動があるため、多く打ってしまったり、少なく打ってしまったりすることが起きやすいと言えるでしょう。このように、糖尿病は死に直結するため、甘く見ずに、しっかりと定期的な検診を受けることが重要です。最後に、糖尿病になったかどうか、を判断するポイントが、多飲多尿、食べているのに痩せてくる、最終段階になると黄疸が出てくる、などが特徴です。予兆に気づかないことが無いように気をつけましょう。