肥満細胞腫に効く可能性のある、グリベックという薬

グリベック、という薬が存在しているのですが、これは分子標的薬と言って、特定の細胞に存在する遺伝子を直接攻撃する物です。

どういう遺伝子を攻撃するかと言うと、c-Kitと言われる、主にワンちゃん、猫ちゃんでは肥満細胞腫かGIFT(消化管間質腫瘍)という、盲腸にできる腫瘍に存在していることが多いです。

まず肥満細胞腫は以前にもブログ内で記載した様に、良性から悪性まで、判別の付きにくい、特殊な腫瘍です。
悪性の肥満細胞腫はかなり厄介な腫瘍で、十分にマージンを取って切除しても再発しまくる傾向があります。
大体その肥満細胞腫のうち、40%程がc-Kit遺伝子を持っており、再発する物にはグリベックを使用してみるのも良いかと思います。

ただし、とても高価なのが弱点でしょうか。

一方、盲腸にできる腫瘍はほぼGIFTであり、GIFTは確実にc-Kit遺伝子を保有しています。

以前、盲腸に巨大な腫瘍ができたワンちゃんがいて、その腫瘍が破裂してお腹の中全体に転移していたのですが、破裂した部分を取り除いて腸を繫げ、その後グリベックを使用したら、転移していた腫瘍がすべて無くなってしまいました。

この様に、悪性の腫瘍でも、物によっては薬で治ってしまう腫瘍も存在します。


ちなみに…
グリベックは非常に高価ですが、裏ワザ的なものがあって、インドでは薬剤の特許が曖昧な部分があります。
インド政府は世界中の製薬会社からクレームを受けているのですが、本来まだ特許期間が切れていないグリベックのジェネリック薬がビーナットという名前で安く売られてしまっています。

インドでは、昔、効果があるかどうかはともかく、とある製薬会社がエイズワクチンを発明した直後に、国民に広く、30円ほどでエイズワクチンを売りだした前科がある程です。

個人輸入でビーナットを安く購入できるこちら側は助かるのですが、ただでさえ薬の開発費用というのは莫大な額が必要なのに、そんなことをされると、製薬会社自体が潰れてしまうかもしれません。

実は当院にも1箱だけビーナットが置いてあるのですが、今のところ、再発を繰り返す肥満細胞腫や、GIFTは来院していません。

代診をやっていた頃は、肥満細胞腫は結構来院していたのですけどね(肥満細胞腫は細胞診により院内で簡単に診断できるので、見逃すことはまずありません)。

細胞を注射針で少量取って、顕微鏡で確認すると、紫色の顆粒を持った細胞がたくさん見られます。これが肥満細胞です。
それと一緒にオレンジ色の顆粒を持った好酸球が認められることが多いです。

こういう、癌の中でも特殊なタイプは診断が付きやすく、早期発見が可能です。
ただし、肥満細胞腫は早期発見しても再発を繰り返すことも多いです。

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