長く日本人を苦しめた、日本住血吸虫

現在では科学者達やその他の人達の尽力があり、日本では全滅している寄生虫です。
(ただし、中国などにはまだまだ存在しています)

文献からは安土桃山時代にはこの寄生虫が確認されていたようです。

この寄生虫は長年うまく退治することが出来なかったのですが、その原因は寄生経路が原因でした。
大抵の寄生虫は経口感染と言って、動物に寄生した寄生虫をそれと気づかずに食べてしまうことから起こります。
アニサキスなんかはそんな感じですね。

ですが、この寄生虫は経皮感染。
なんと皮膚を突き破って感染する寄生虫だった訳です。
つまり、当時は当然、生水を飲む文化は無かったでしょうが、水を煮沸してから飲んでも、日本住血吸虫にとっては何の意味も無かった訳です。
経費感染に関してどう闘ってきたかは置いておいて、
まず感染した部分に皮膚炎が起こります。
当時の医学が発展していない時代では、これを泥かぶれ、と言って大したことの無いものとしてあつかっていました。
他の地方では泥にかぶれるなんてありえないのに。

その後は発熱や腹痛、下痢をお越し、最終的にはこの寄生虫が産んだ卵が全身の血管につまり、肝硬変や多臓器不全を起こして死んでしまいます。

日本では数カ所の地域で認められていましたが、特に甲府盆地で顕著で、人は長生きできず、30くらいになってくると、肝不全で黄疸、腹水でお腹がポッコリする人が出てきました。

この地域にお嫁に行く際は、もう家族には会えないだとか、棺桶も嫁入り道具の中に入れていけと、歌に詠まれるまでの状況でした。

最初に原因となる寄生虫が発見されたのは、1904年に、猫の肝臓から寄生虫が見つかったことによります。

ですが、ここからが大変でした。
先程も説明した通り、経皮感染するという寄生虫は非常に少ないと言って良いもので、予防のために、先ほども挙げた様に、水は煮沸してから使用するように!とか、です。
もちろん意味は無かったわけですが。

その中でとある医師が、
『経皮感染する吸虫なんて、いる訳がない!』
と言い、自分で田んぼの水を持ってきて、その中に手を入れて、経皮感染するはずがないことを証明しようとしました。
でも、その結果、その医師は日本住血吸虫に感染し、死亡しました。
皮肉な話ですが、それで経皮感染することが完全に立証された訳です。

さて、感染経路が判明した訳ですが、どうやったら予防できるかが問題になりました。
なにせ、田んぼに入ったら感染してしまう。
田んぼに入らないと生活できないんです。
(ちなみに当時は治療法はありませんでした。今ではプラジカンテルという特効薬がありますが、常に薬を飲みながら生活するわけにも行きません)
また、日本住血吸虫はほとんどどんな哺乳類にも感染する、という厄介な特徴がありました。

そこで、日本住血吸虫の中間宿主を見つけることに成功しました。
すべてでは無いですが、大抵の寄生虫は、途中に中間宿主という、感染する動物がいないと、最終的に大人になるための動物に寄生できないんです。

例えばフィラリアは、蚊が中間宿主になります。
フィラリアに大量感染したワンちゃんの血を直接他のワンちゃんが飲んでもフィラリアには感染しません。
間にどうしても蚊が必要になる訳ですね。

日本住血吸虫の中間宿主はミヤイリガイという、タニシみたいな貝でした。
つまり、ミヤイリガイの撲滅=日本住血吸虫の撲滅です。
もちろん先程、タニシみたいな貝と言ったように、目に見えない日本住血吸虫よりはまだましですが、ミヤイリガイもワッサワッサいるため、撲滅は困難を極めました。

が、殺貝材を使用したり、用水路をコンクリート製にして、ミヤイリガイには住みにくい環境にしたり。

日本住血吸虫は日本の中では絶滅させられました。
日本住血吸虫の終息宣言が出たのは、なんと1996年です。
そんなつい最近まで、最悪の寄生虫が存在した訳です。
でも、日本は唯一、日本住血吸虫を撲滅した国になりました。

日本住血吸虫という名前から、日本固有種だと思ってしまいますが、実際には中国や東南アジアにはまだまだこの日本住血吸虫が存在しています。

この寄生虫を一瞬で全滅させる方法はなく、日本は地道な努力で退治しきりました。

明らかに存在することがわかっていたのが600年は前。ですが風土病ということで、ずっと見逃されていました。
寄生虫が原因とわかったのが120年前で、撲滅したのが20年前です。

獣医学にも関係することから、大学の授業でも日本住血吸虫に関しては習いました。
当時はそういう寄生虫がいる、という程度の内容しか教えてもらっておらず、日本住血吸虫の怖さに関して知ったのはつい最近になります。

ただ、日本住血吸虫が撲滅されたあたりから、今度は人間の脳に寄生する、広東住血吸虫という寄生虫が現れ出しました。

こちらは日本住血吸虫ほどの感染力はなく、死亡率も低いですが、淡水の貝類やカタツムリ類全般が宿主になります。
感染すると、直接退治はできず、頭に激痛が年単位で走り続けるそうです。

カタツムリには気をつけましょう。
というか、野菜をきっちり洗わないと、この広東住血吸虫に感染することがあります。
カタツムリが歩いた場所も危険な訳です。

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