猫のワクチン接種部位肉腫
以前にも記載した話ですが、獣医学腫瘍科専門医の先生に聞いた内容です。
猫ちゃんにワクチンを打つ際に、1万頭に1頭程の割合で、ワクチン接種部位肉腫、というワクチンを打った所に発生し、発生したらいくら切除しても再発し、ほぼ確実に死亡する、という腫瘍ができてしまう子がいます。
腫瘍の発生に関しては、どうやら遺伝が関係しているようです。
アメリカでは猫ちゃんも狂犬病予防注射が義務づけられているのですが、混合接種ワクチンは左足かかと、狂犬病ワクチンは右足かかとに注射するのが基本になっています。
かかとに注射するのは、もし万が一、ワクチン接種部位肉腫ができてしまっても、後ろ足一本なら、切除しても生活にほとんど影響無く生きていけるためです。
当院でも、それを見習って、現在は混合接種ワクチンを左足かかとに注射させていただいています。
(以前はふくらはぎの辺りに注射していました。こちらも同様に切除可能なためです)
では、なぜ遺伝が関係しているらしい、と言えるのかというと、その腫瘍科の先生が人伝てに聞いた話で、どこかの先生がワクチンの打ち方を間違えて覚えてしまったそうで、毎年交互に、左右のかかとに注射する、ということをやってしまっていたそうです。
その結果、その猫ちゃんは両足ともワクチン接種部位肉腫になってしまいました。
本来、1万頭に1頭の割合で発生する腫瘍が、一匹の猫ちゃんの両足に発症したことから、ワクチン接種部位肉腫は遺伝子の問題で発症することがほぼ確実であることがわかります。
先ほども記載した様に、当院では以前は左足ふくらはぎに、現在は左足かかとにワクチンを接種しているため、その辺りに瘤ができてきた、という方はすぐに診察に来ていただいたほうが良いでしょう。
ワクチン接種部位肉腫は、細胞診(小さな針で細胞を取って、腫瘍がどういうものか確認する検査)である程度判別をつけることができます。
問題はただの炎症と区別しにくい、ということがあることですが、取った細胞がメチャクチャな形をしていたら、ステロイドで小さくなればただの肉芽組織、小さくならなければワクチン接種部位肉腫、ということがわかります。
ワクチン接種部位肉腫が怖くてワクチンを打たせられない、という方もいるかもしれませんが、ワクチン接種部位肉腫で亡くなる猫ちゃんよりも、猫伝染性鼻気管炎やパルボウィルスで亡くなる猫ちゃんの方がずっと多いため、かかとに注射すれば生き残れること、ワクチンを打たずに亡くなる事の方が多いことを踏まえて、ワクチン接種を実施することをオススメします。
(ワクチン接種をせずに一生苦しんで生きる猫ちゃんもいるため、本当にワクチンは打っておいた方が良いと断言できます。多頭飼いでもワクチンは打ちましょう!)
追記
ちなみにアメリカでは混合接種ワクチン、狂犬病ワクチン、両方を注射する、と記載しましたが、混合接種ワクチンは左足、狂犬病ワクチンは右足、という所で統計を取ったところ、狂犬病ワクチンの方が、より一層ワクチン接種部位肉腫を引き起こす確率が高かったそうです。
日本では狂犬病予防注射を打たずにすんで良かったかもしれません。
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