やってはいけない、無麻酔下での歯石除去
人間と同じように、無麻酔下で歯石の除去をしてあげた方が、ワンちゃん猫ちゃんにとって安全だろう、と考える方がいます。
確かに麻酔をかけないことで、呼吸抑制のようなことが起こることは防げますが、当院では自動呼吸器を使用していますので、その点は安心していただいて良いかと思います。
そこで無麻酔下での歯石除去の問題点ですが、かなり沢山あります。
まず、ワンちゃんの中では、歯石除去の機材を噛んで、歯が折れてしまう子がいること、麻酔をかけないため、麻酔下では行っている研磨が出来なくなり、今後はより一層歯石が付着しやすくなり、歯槽膿漏になりやすくなる、などが挙げられます。
当院にいつもトリミングに来てくれているワンちゃんが、他院で無麻酔下で歯石除去を行ってもらったところ、歯が一本折れ、常に口を気にするようになりました。そしてたったの2年で歯はボロボロ。全歯、歯槽膿漏になってしまいました。
全身麻酔下では、超音波で表面の歯石を除去し、研磨剤と研磨機を使用して、その後の歯石が付きにくくなるようにします。
一方、無麻酔下での歯石除去は、ごりごりと歯の表面を削る上、研磨して表面を平らにしないので、歯は傷だらけになって、その傷の部分は歯石(つまりばい菌の塊)の絶好の増殖中場所になってしまうんです。
こうなると、顎の骨も溶けてきてしまうため、歯の治療は困難になります(下手をすると歯の処置をしているうちに顎が折れてしまう)。
中には同様のことをして、下顎が折れたダックスフントを見たことがありますが、普通の顎ならプレートという隣通しの骨をくっつけて骨折を治す、ということをやるのですが、この場合、プレートをネジでつける際に、そのネジでさらに別の部分が折れるという悪循環を起こしたりもします。
歯石を取りたいけど、麻酔が怖いと思っている方は、ちゃんと心臓のチェック、血液検査での内臓のチェックをした上で、人工呼吸器を使用していますので、昔よく言われたほど、歯の処置で問題が起こることは無くなっています(昔、まだ麻酔や機械が発展していなかった頃、それこそ30年は前になりますが、歯石除去は避妊や去勢よりも時間がかかるため、それなりに危険性がありました)。
もしとことんでも麻酔下での歯石除去をしたくない、というのなら、無麻酔下の歯石除去もやめておくべきです。
最終的に何もしないのと、無麻酔下で歯石除去をするのでは、無麻酔下で除去した方が口の中がボロボロになることが良くわかっています。
無麻酔下で歯石除去できる!というと、ラッキー!と思ってしまうかと思いますが、とんでもない落とし穴が待っていることを忘れないようにしてください。
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