腫瘍の悪性、良性をしっかりと判別できる!病理学的検査(幽霊部屋話しを補足)

病理学的検査というのは、皮膚や内蔵、腫瘍などの細胞の中に、色々な過程を経てパラフィン(蝋に近いです)というものを浸透させます。

こうなった、上記の様に採取した組織はもともと肉片にもかかわらず、硬い蝋のブロック状になり、特殊な器具(カンナの様に、物をうすーく切る道具)によって、数マイクロという薄い切片となります。
コレが切片です。裏側がわずかに透けて見えるのがわかるかと思います。

これを乾燥後、染色液に浸し、色を付けます。
別のものですが、こうやって、超薄切りの組織が出来上がります。
そして、こうなった組織を顕微鏡で確認すると‥‥
こんな感じで見ることができます。

これは肝臓ですね。
大体倍率は400倍くらいでしょうか。これは正常な組織ですが、悪性腫瘍などになると、一つ一つの細胞や、中心にある核の大きさがバラバラになったり、普通の細胞と異なり、分裂が盛んに起こるため、細胞分裂像が確認できたりします。

この方法が一番しっかりと悪性、良性やちゃんと瘤が取りきれているか、転移像は見当たらないか、などを判断することができます。
(ただし、転移をもうすでにしている、という診断はできることがありますが、まだ転移していないかどうか?の診断は不可能です)

病理学教室所属時代に、幽霊が出ると噂の、下手すると床を踏み抜くような、ボロ屋敷になった作業所で、ひたすらうすーい切片を何枚も作っていた思い出があります。(ちなみに幽霊は出ました。仮眠を取ろうとしたら、人の腹を踏んで来るのです。眠れねーだろ!と怒鳴ったら消えました)

ちなみに特殊な機材が必要なため、動物病院内でこれを行うことはできません。


逆に、簡易的な方法があるのですが、それが以前にも記載した細胞塗抹の簡易検査です。

瘤などに針を刺して細胞を吸引し、吸引した細胞をスライドガラスに吹きかけることで、
この様なバラけた細胞の切片が出来上がります。
これは核が異常に大きく、核や細胞ごとの形がかなり異なるため、悪性と判断できます。

と言っても、僕が病理学教室専攻だっため、塗抹での悪性良性を判断することができるというだけで、通常の獣医はこの切片をみても、それを判断することは難しいでしょう。

当院では簡易染色で良悪の判断や、どのような腫瘍かがある程度できるアドバンテージがあります。
ある程度、なのは塗抹の場合、プロでも完全な判断が下せないことがあるためです。
塗抹でも、しっかりとパラフィンを浸透させた切片でも、リンパ腫や肥満細胞腫などは細胞が異型を示していることがよくわかったりします。

先ほど説明した様に、その後の寿命や、転移する可能性をある程度判断できるので、ペットに瘤ができた!
という方は一度、簡易染色を実施してみると良いかもしれません。

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