椎間板ヘルニア(修正)(当院で外科手術をオススメしない理由)

ダックスフントが非常に起こしやすい、本来背骨同士の緩衝材である椎間板が、上に飛び出しで、そこを通っている脊髄にダメージを与える病気です。

ちょうど上の様な感じになります。

椎間板ヘルニアにはグレード(病気の重さ)があります。

椎間板ヘルニアのグレードとして
・グレード1
軽度の脊髄圧迫ですので、脊髄の機能障害がなく、歩き方などの神経学的な異常は一般的にはみられません。
「痛そうに背中を丸めてじっとしている」、「抱き上げるとキャンと鳴き、痛がる」、「ソファーや階段の昇り降りを躊躇するなど、運動したがらない」というような症状
がみられることもあります。
・グレード2
痛みを感じている様子が繰り返しみられます。歩行は可能ですが後肢の力が弱いため、ふらつきながら歩く姿がみられます。足先を引きずるようにして歩き、爪の背面が磨り減っていることがあります。
・グレード3
部分的な麻痺(不全麻痺)がみられます。後肢は歩行に使うことはできませんが、後肢で支えて起立することは可能です。前肢だけで進み、後肢を引きずります。
自力での排尿が可能な状況です。
・グレード4
起立や歩行が不可能な状態で、完全に運動能力を失った状態(完全麻痺)です。自分で排尿をすることができなくなります。
爪や足先の骨をつまむと痛みを訴え、筋肉や関節など深部の痛覚は完全に消失はしていません。
・グレード5
起立や歩行が不可能な状態で、完全に運動能力を失った(完全麻痺)状態です。グレード4よりも症状が深刻で、筋肉や関節などは痛みを感じることができません。
あくまで上記のグレードは一例に当たります。

治療法としては外科手術、内科療法、鍼治療などがあります。

以前は外科療法一択だったのですが、現在ではグレード4までなら、内科療法、外科療法とも、8割ほど改善が見込めると言われています。(内科療法は5割、外科療法は9割と記載しているものもありますが、ここで言っている内科療法は痛み止めやステロイドの投薬になります。上記で挙げている内科療法は次の項からお話いたします)
残念なことに、グレード4まで行った大抵の子は軽度から重度の麻痺が残ることが多いです。(ほぼ完全に回復という子ももちろんいます)

当院では内科療法を選択しています。
もちろん、昔ながらのステロイドの投薬といった内科療法とは異なります。
内科療法と聞いて、ステロイド治療と勘違いされる方が多いため、今回の記事を載せました。

最近、と言ってももう大分前からですがステロイドでの治療は効果が無いという論文が数多くでています。
最近はネットで情報を調べる方も多く、こちらと勘違いしてクレームをされる方がいらっしゃいます(
エラスポール  椎間板ヘルニア
と検索すると当院で実施している治療が出てきます)。

この治療法は、もともと外科療法を推進していた著名な先生が、この内科療法でも手術と同じ程度で回復が見込めることを発見したものです。

治療薬はエラスポールという、人間では元々誤嚥性肺炎の治療に使われている物を使用します。
主に、炎症を抑えるのが主体の薬です。


何故この薬を使用するのかというと、椎間板ヘルニアの最も厄介な所は、まず椎間板が脊髄を圧迫してダメージを与えるのが第一段階。

そして特に厄介なのが、第二段階の、圧迫を受けた所に白血球などが集まって、炎症を起こすことです。

本来体を守る炎症が、脊髄で起こることで、より深いダメージを脊髄に与えてしまいます。

エラスポールはこの二段階目の炎症を抑えることを目的として使われます。

そうやって炎症を抑え、ダメージが減るようにし、その間に自分の体の回復力で脊髄を回復していってもらう、ということですね。

この治療の場合、グレード4でも約8割が改善すると言われています。

外科手術もこれと同じで、圧迫している椎間板を取り去ることで、それ以上の炎症を抑える、という治療になります。

鍼治療に関しては、申し訳ありませんが、正直よくわかりません。

そして、グレード5に関し言及しなかったのは、ここまで酷い状態になると、脊髄軟化症という、ヘルニアを起こした部分以外の脊髄もダメージが広がっていき、死亡することがほとんどだからです。
グレード5に関しては、内科療法ではほぼ確実に死亡するため外科手術が必要になります。
しかしながら、外科手術を行ったうちの少数が生存する程度で、後ろ足の完全麻痺や、尿、便の垂れ流しはほぼ残存してしまいます。

昔は椎間板ヘルニアになった場合、48時間以内に手術が必要と言われていましたが、それも否定されてきています。

以上のように、あえて外科手術を行う、という選択をいきなり取らずに、まず内科療法を行い、改善が認められなければ外科手術を行ってみるのも一つの手段かと思います。

ただし、内科療法で治らなかった状態が、外科手術で治るかどうかは残念ながら不明です。

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