猫のアトピー性皮膚炎の治療に関して(心因的皮膚疾患と一緒に読むと理解が広がります)

当院では基本的に、アトピー性皮膚炎と判明した場合、持続性のステロイド注射を使用してきました。
一月に一度で済むため、猫ちゃん本人にストレスがかかりにくいからです。

副作用としては、若い頃は何も起こりませんが、歳をとって、糖尿病になりかけた状態になると、このステロイド注射が糖尿病を発症させてしまうことがあります。
遅かれ早かれ、糖尿病になりかかってるのには違いないと言ってしまえばそれまでなんですが。

そして、今回から使用しようと考えているのが、シクロスポリン。免疫抑制剤です。
痒みが消えるまでに2周間ほどかかるのが厄介ですが、そこはステロイドとの併用でカバーできるでしょう。

シクロスポリンは症状に伴い、徐々に薬用量を減らしていくことができることが多い、というのが特徴です(減らした途端痒がる子もいます)。
副作用としては、歳をとって、体のどこかに癌が出来た際に、癌の成長を手伝ってしまう、という難点も存在します。
雌猫ちゃんの場合、乳腺に瘤ができると、ほぼ100%が悪性のため、気づかないほど小さな瘤が出来た際に、腫瘍の増殖や転移を早めてしまう心配があります。

つまり、ステロイドもシクロスポリンも一長一短あるということですが、選択肢が増えれば、より良い治療を行うこともできるのではないかと思います。。

猫ちゃんの場合、1歳以上になって痒みを訴える子は、ほとんどがアトピーであることがわかっているので(論文で証明されています)、今後は飼い主さんとの相談で、持続性ステロイドを注射するか、シクロスポリンを飲ませるか考えていかせてもらおうと思います。

ただ、以前もシクロスポリンを使用してみたことがあります。
その時使用した、シクラバンスという製品名のものを使うのが値段的にも使用しやすいとは思うのですが、何故そう作ったのかと思うほど、大人の男性でも固くて中身の液体を吸入し難いものとなっています。

他のシクロスポリンにはアトピカという商品やカプセル状の物が存在しているのですが、値段が高く、カプセルは正確な用量を投与できない、という弱点があります。

その点も飼い主さんと今後相談していきたいと思っています。


追記

アメリカではワンちゃんに使用されるアポキルという、特に副作用が少ない痒み止めも、猫ちゃんへの使用が承認制されています。
日本では効能外使用、ということになるのですが、安全性は確立されているということなので、こちらを使用する、というのも一つの方法です。
難点は錠剤しか存在しないというところでしょうか。

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