猫の心因性皮膚疾患
心因性皮膚疾患とは、要するにストレスによる、過度のグルーミングから起こる薄毛や、皮膚炎になります。
まず、寄生虫や細菌による皮膚炎が除外されれば、アトピーが疑われます。
(アレルギーも一緒。猫では研究がまだあまり進んでいなく、ハウスダストなどの環境アレルゲンによるものをアトピー、食べ物アレルギーをアレルギーと呼称されており、ごっちゃにされています。猫ちゃんでは人間と異なり、アレルギー性皮膚炎=アトピー性皮膚炎と呼ばれてしまうことも多いと思って下さい)
それ程心因性皮膚疾患は珍しく、大体猫ちゃんの皮膚疾患の1.2%のみがストレスによるものなのだそうです。
心因性のものは、常同行動というひたすら同じ行動を取ることが多く、診断の一因となります。
ただし、絶対とは言い切れません。
では心因性の皮膚炎とアトピー性皮膚炎をしっかりと区別するにはどうするかというと、ステロイドを使用することがほとんどです。
ステロイド、と言うと副作用が怖い、と言う考えにつながるかと思いますが、猫ちゃんはステロイドによる副作用が非常に出にくいのが特徴です。
厄介のなのは、若い内は問題なくても、将来、糖尿病になりかかっている猫ちゃんにステロイドを使用すると、糖尿病を誘発してしまうことがあることでしょうか。
一定の期間使用するだけであれば、副作用が出ることが無いため、当院では寄生虫や細菌、カビによる皮膚炎出ないことが判明すれば、一度ステロイドを使用してもらって、心因性とアトピー性の区別をしています。
1.2%なら、そこまでやる必要は無いのでは?という人もいるかもしれませんが、以前、心因性の皮膚炎であることが判明したこともあるため、そこはしっかりと鑑別診断させていただいています。
面白いことに、専門医の先生も、それこそほとんどアトピー性なのだから、少しでも痒みを取る処置(この場合ステロイドの投与)を実施して上げたほうが良い、とのご判断でした。
そして、アトピー性皮膚炎だと分かれば、外注の血液検査で何に反応しているか調べたり、
そこまで希望せず、痒みをステロイドや免疫抑制剤で抑え続ける治療のみを行う患者さんもいらっしゃいます。
問題なのは心因性の方です。
こちらは非常に厄介で、はっきりと治療法と言える治療法がありません。
ストレスと言っても、様々な原因、および個人差があるからです。
外に出られないから、最近変な音が聞こえるから、飼い主さんが家にいないから、食べたい時にご飯を食べられるか、必要以上に構いすぎてないか、適度に遊んであげているか、などなど、挙げれば切りがないですが、解決不能なストレスの原因もたくさんあります。
また、猫ちゃんは通常群れを作らない動物で、仲良しに見えても多頭飼育にストレスを感じている、と言う研究結果も出ています。
どう見ても、ストレスの原因になっているとは思えないことでもストレスになっているということです。
心因性皮膚疾患および、他の心因性の病気全般は人間の精神疾患に近いものと考えても良いかもしれません。
前進がヨダレだらけになるほどにグルーミングをしたり、皮膚や唇がえぐれる程舐め続けたり、好きな家族が家にいないだけで、ずっと鳴き続ける子もいます。
治療法としては、人間と近いものとなります。
抗不安薬の使用、ですが眠くなってしまうこともあります。
セロトニン(精神を落ち着かせる?ホルモン正確には異なりますが、それに近いものと思って下さい)を分泌させるため、アミノ酸のトリプトファンを含んだサプリメントを与える。
エリザベスカラーや、専用の服を着せる。ただし、これ自体がストレスを助長してしまうことがあります。
あとはストレスの原因がしっかりと分かっていれば、生活環境を変えるのも治療の一つとなります。
正直言って、どれも完全な治療法とは言えないものでしかないでしょう。
人間の様に、何がストレスなのか聞き出せれば一番なのですが、それも不可能です。
この病気になる子は極端に少ないとはいえ、本当に治療が難しい。
欲求不満を解決してあげることができれば良いのですが、個人差が大きいことも問題です。
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