ワンちゃんの肝硬変
猫ちゃんも同様ですが、ワンちゃんの肝硬変は非常に珍しいものです。
なぜなら、ワンちゃんは人間のように酒を飲んだりしないからです。
では、なぜ肝硬変になるかというと、先天的な代謝異常や、肝構造の異常が原因なことが多いです。
肝臓に銅が蓄積しやすい犬種にベドリントンテリア、スカイテリアがあり、はっきり言ってこの犬種の名前を聞いたことがない人の方が多いでしょう。
銅や過剰な鉄分は肝臓にダメージを与えるのですが、この2つの犬種は肝臓に銅が蓄積しやすい犬種です。
他にはウエストハイランドホワイトテリア、ラブラドールレトリバーの雌、ダルメシアンなどが、原因不明の肝硬変を起こすことがあると言われています。ただし、好発犬種と言っても、かなりの低確率です。
この子達は肝臓の構造に異常があった場合に肝硬変に成り得るのでは?と言われています。
他に、犬種関係なく起こすことがあるものとして、薬物中毒が挙げられます。
たまに猫ちゃんが、隣の家がペンキを塗っていたら、飛散した細かい粒子だけで急性の肝炎になることもあります。
ですが、もっとも多いのはてんかん発作に使用されるフェノバルビタール中毒による肝硬変でしょうか。
しかしこれも、引き起こされることはかなり少ないです。
ちなみに当院ではほとんど副作用が無いと言われるゾニサミドをてんかん発作の治療に使用しています。(フェノバルビタールの方がてんかん発作を抑える効果が高いため、ゾニサミドが効かない場合、フェノバルビタールを使用しています)
肝硬変の厄介なところは、肝臓には予備能、というものがあり、肝臓の大部分が壊れても、症状が出ないことにあります。
代表的な症状としては多飲多尿、食欲不審など、他の病気や、病気でなくてもよく起こる症状くらいしか出ないことが多いです。
ただし、症状が最終段階に入ると食べているのに栄養失調を起こし、痩せていく。腹水の貯留や、もう助からない段階に入ると肝性脳症と言って、肝臓が分解するはずのアンモニアが頭に周り、てんかん様発作を起こしたりします。
そもそもの話、最初に記載した通り、肝臓は寿命を迎えるまで(癌などにならなければ)、しっかりと働き続けてくれることがほとんどです。
ベドリントンテリア、スカイテリアは銅の蓄積を防げないため、肝硬変が高率に起こると言われていますが、他の犬種で肝硬変を見るのは僕の場合、5年〜10年くらいに一頭というくらい珍しいものです。
実は本日、肝硬変直前のワンちゃんを診る機会がありました。ですが、好発犬種ではありませんでした。
おそらく、小さい頃から肝臓の構造が未完成だったのでしょう。正直、そのくらいしか理由が見当たらないと言うのが本音です。
ただ一つ、気をつけないといけないのは、ビタミン過剰摂取が挙げられますでしょうか。
ビタミンA過剰摂取で肝硬変を起こすことがあります。
脂溶性ビタミンで水溶性ビタミンのビタミンCなどとは違い、多量摂取すると様々な症状と一緒に肝硬変を起こします。(ビタミンAは殺人事件にも使われたことがあったりします)
肝硬変はまず起こすことが無い病気ですが、見つけることがかなり困難な病気です。
珍しい上に、症状が出てきた時にはもう遅い。
ですが、やっぱりそうそう起こらない病気なので、あまり心配しないようにすると良いでしょう。ラブラドールの雌が好発犬種と書きましたが、それもかなり稀なレベルです。
追記
猫ちゃんはワンちゃん以上に肝硬変にはなりにくいですが、体の問題にならないくらいの肝臓の奇形を持っていることが多いです。
こういう、害の無い奇形を破格、といいます。
こういう場合、小さい頃から肝臓に少しずつダメージが加わって行くことも多く、若いうちに肝酵素の上昇があれば、将来的な安全のために利胆剤を使うことが多いです。
利胆剤は滞った胆汁の流れを良くし、肝臓のダメージを改善してくれる薬で、もともと漢方の熊の胆から合成された、副作用がほぼ無いのも、良く使われる理由です。
また、猫ちゃんの特徴として、特に太った猫ちゃんはよく起こるのですが、長期間食べないでいると、あっという間に肝臓全体が脂肪肝になってしまいます。食べないことで脂肪肝になる、というのは不思議かもしれませんが、猫ちゃん特有の代謝異常によるものです。
さらに黄疸が出たりして、余計に食欲を失うことがほとんどなため、強制給餌が治療法になります。
ちなみに猫ちゃんの肝硬変は、20年近く獣医をやっていますが、見たことが無いくらい珍しいものです。
見逃しているだけじゃないか?という人もいるかもしれませんが、肝硬変は血液検査とエコー検査で簡単に見つけることが可能です。
元気が無い状態が続いている子には検査を行うため、見つけられない、ということはまずないかと思います。
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